まず予備知識。天皇の皇位継承は男系にすべきである理由の一つに、「神武天皇のY染色体を受け継いでいるのが男系だから」という主張がある。
雑誌Newton2006年2月号の特集は「「性」を決めるカラクリ XY染色体」。これはもしや、と思って購入。(勿論内容を確かめてから買ったのだが。)
表紙からは分からないが、中身を見てみると…。
やはりあった。タイトルがいきなり
X染色体は、つぎはぎされて次世代へ。だがY染色体はそのまま次世代へ
ときた。本文を読んでいくと
実は、染色体の両端にあるごく短い領域をのぞけば、基本的にY染色体では交差がおきない。
徳島大学医学部の中堀豊教授は次のように語る。
「何世代、何万年たとうとも、男系の家系がつづくかぎり、突然変異をのぞけば基本的にY染色体の塩基配列は変化しません。こうしたY染色体の特徴は、親子鑑定や、人類の足どりをたどる研究などに利用されています」。
とってつけたように男系という言葉が載っている。その後の文脈とは無関係に。さらには、右下のコラムに…
家系図があり、Y染色体が連綿と受け継がれていく図が描かれている。そして3世代後の部分に「先祖由来のX染色体は薄まる」「先祖由来のY染色体は薄まらない」と。ううむ、これは果たして科学なのだろうか。その他のタイトルと並べて見てみよう。
他のテーマは生物の話なのだが、どうも男系の話だけ浮いて見える。この内容だけで皇位継承の話を結びつけるのは無理があるが、時期が時期だけに、なにやら作為的な何かを感じてしまう。
因みに、皇位継承が男系であればそれは当然Y染色体が継承されるわけだが、そんなものは飽くまで結果論である。もし女系であったのならばミトコンドリアが継承されるだけのことであるし、そもそも染色体だのミトコンドリアだのと有機物を有り難がる事が本質ではあるまい。
拙サイトの皇位継承に関する主張は
を参照していただきたい。関連ページも以下に示しておく。