男系を維持する事は非常に困難なことである。
本稿では、今現在存在している皇室の状況とは切り離して、男系男子というものが原理的に可能なのかを考える。我々は次の条件
における男系継承を行い得る確率を求めた。結果は次の通りである。
世代 | 男子継続率 |
---|---|
二代目 | 75.00% |
三代目 | 60.94% |
四代目 | 51.65% |
五代目 | 44.98% |
六代目 | 39.92% |
さてこの結果の意味する事は何か。実はこの結果を導くための条件の男子出生確率を 1/2 から少しずらしたところで本質的な変化はない。同様に、皇位継承権を持つ男子を一人でなく五人や十人としたところで、これも本質的な変化はない。二人以上生まないという条件下では、数学的に考えれば男子の出生確率は世代を追うごとに悲観的になっていく。(指数関数的減少よりは緩やかな減少であるが。)
そう。二子しか生まないという事では駄目なのだ。皇位の男系継承を維持するのであるならば、皇位継承権を持つ男子の妻は男子が生まれるまで生み続けなければならないのだ。これは当事者に多大な負担を与えるであろう。
その負担を軽減するためには何らかの意味で女性を増やさなければならない。一夫多妻が普通であった時代なら側室を設けるという選択肢も考えられたかもしれない。昭和天皇がこれを拒んだのであるが、元に戻すのは恐らく困難であろう。
皇統を維持し、かつ、女性一人当たりの負担を軽減するためには、構造的に可能な方法としては宮家を増やす以外にないかと思われる。負担は夫婦の組の分だけ分けられることになる。しかし豊富な宮家を作るという事は、直系にこだわらない事に通ずる。
いずれにしても、皇統を守っていくというのは非常に難しい事なのである。そのためには、天皇やその歴史、そして今抱える問題に関する理解とその啓蒙を行わなければならない。
N 人の子の中で男子が n 人いる確率を PN(n) と表す。このとき
となる。ここで N 個の中から n 個取り出す組み合わせの記号
を用いた。次に N 人の子の中で男子がいる確率、即ち女子のみである事象の余事象における確率を Q(N) と表そう。これは
の様になる。例を挙げよう。二、三、四代と続いていくことを考える。二代目は2人中2人とも男子であるとしよう( P2(2) )。三代目はその男子の子4人の中のうち3人が男子とする( P4(3) )。そしてそれらを経て、四代目の6人の中で男子が生まれる( Q(6) )ような確率はそれらの積
で与えられる。これらの可能性を全て足し上げたもの
が四代目に男系男子が存在する確率となる。五代目に男系男子が存在する確率は
となる。