エネルギーの導出

(H24/6/24 HTML化)
H21/5/6

1.  保存量としてのエネルギー

運動方程式 $d\boldsymbol{p}/dt=\boldsymbol{F}$ が成り立つと仮定すると, 外力が保存力 $\boldsymbol{F}=-\nabla U$ であるとき, 運動方程式に速度を掛けて \begin{align} \frac{d\boldsymbol{p}}{dt}\cdot\boldsymbol{v} &= -\frac{d\boldsymbol{x}}{dt}\cdot\nabla U \notag\\ \frac{d}{dt}(\boldsymbol{p}\cdot\boldsymbol{v})-\boldsymbol{p}\cdot\frac{d\boldsymbol{v}}{dt} &= -\frac{d}{dt}U\notag \end{align} ここで \begin{align} -\boldsymbol{p}\cdot\frac{d\boldsymbol{v}}{dt}&= -\frac{m}{2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}\frac{dv^2}{dt}\notag \\ &= \frac{d}{dt}\left(mc^2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}\right)\notag \end{align} より \begin{align} \frac{d}{dt}\left(\frac{mv^2}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}+mc^2\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}+U\right)&= 0\notag \\ \frac{d}{dt}\left(\frac{mc^2}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}+U\right)&= 0\notag \end{align} を得る. こうして得られる保存量をエネルギーと呼ぶのであるが, エネルギーはそもそも定数分の自由度がある. そこで運動エネルギー $K$ として, Newton力学の時と同じように $\boldsymbol{v}=0$ のとき $K=0$ としよう. こうして, 運動エネルギー \[ K=\frac{mc^2}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}}-mc^2 \] が得られた.

2.  物体のエネルギー

質量 $m_1,\ m_2$ の2体が, それぞれ速度 $v_1,\ v_2$ で運動している系を考える. これを1体と考えれば, 質量 $M$ の物体が速度 $V$ で運動していることになる. このときの運動エネルギーを調べよう. \begin{align} K_1+K_2 &= \left(\frac{m_1c^2}{\sqrt{1-\frac{v_1^2}{c^2}}}-m_1c^2\right) +\left(\frac{m_2c^2}{\sqrt{1-\frac{v_2^2}{c^2}}}-m_2c^2\right)\notag \\ &= \frac{Mc^2}{\sqrt{1-\frac{V^2}{c^2}}} -m_1c^2-m_2c^2\notag \\ &= K+Mc^2 -m_1c^2-m_2c^2\notag \end{align} さて, これは本来ならば, 運動エネルギーの出入りは全くないので \[ K_1+K_2 = K \] となるべきである. 個々の物体の集まりとして考えても, 全体で1つの物体として考えても 同様の結果を与えなければならない. これは $K$ に $mc^2$ だけ加えたエネルギー $E=K+mc^2$ を導入することによって \[ E_1+E_2=E \] となり, 整合的になる. こうして物体のエネルギー $E$ \[ E=\frac{mc^2}{\sqrt{1-\frac{v^2}{c^2}}} \] を得る. この表式によるエネルギーの合成は, 質量の合成と $c^2$ の違いでしかなく, 同じものを与えていることが分かるであろう.

上では運動エネルギーしか扱っていないが, 物体の静止エネルギー $mc^2$ というものが, それを構成する物体の静止エネルギーと運動エネルギー, そして構成する物体間に働く結合エネルギーの総和に等しいことが容易に分かるであろう. 最早単にエネルギーのゼロ点をずらしただけではなく, 意味を持った量なのである.