2. 運動の第 2 法則と慣性質量
物体 A に任意の力 F を加えると, A はそれに比例して加速度 a で運動をする, 即ち
a=FkA
が成立する事が分かる. kA は物質の種類に依存するであろう比例定数で, kA が大きければ慣性は大きくなり, kA が小さければ慣性は小さくなる.
ここで再び A を n 個用意し, 1 つの物体(A ′ )とみなせるように接着する. A ′ を構成する A (以下, 要素 A と呼ぼう) 一つ一つに, 上手い具合に力 1nF を加えるとしよう. これは力の合成則を利用して, A ′ に加える力を丁度 F とするためである. 要素 A 一つ一つに運動方程式
a′=FnkA
が成立する. 要素 A と A ′ の加速度は同じ a′ であるから, この運動方程式は A ′ に力 F を加えた時の運動方程式
a′=FkA′
と同一なはずである. 従って比例定数は
kA′=nkA …(4)
となり, 物体の量に応じて慣性の強さが大きくなることが結論付けられる.
こうして我々は, 慣性の強さを表す, 複合物体に対しては和で合成されるような, 物体に固有の物理量が存在する事が得られた. それを慣性質量 (inertial mass) と呼ぼう. 物体 A の慣性質量を m と置けば, A ′ の慣性質量 m′ は
m′=nm …(5)
となる. (4) 及び (5) より, 運動方程式は物質の種類と無関係な次元合わせのための比例定数を k˜ として
a=k˜Fm
となる. 加速度 a の単位は Length · Time −2 であるのに対して力 F と慣性質量 m の単位は定義されていないことに注意しよう. つまり力と慣性質量の単位を適当に定義すれば, k˜=1 にすることが出来るのである. こうして運動方程式の最終的な形
m a=F …(6)
を得ることとなる.