何回買えば揃う?

H15/02/04 (H16/10/29 改訂)

期待値

H15/02/04

ジュースのボトルキャップや、いわゆる食玩と呼ばれるオマケ付きお菓子にある、○○を集めよう! というアレ。いったい何回買えば全て揃うのだろうか?

例えば、サイコロで5の目が出る為にはおよそ6回振ればいい。一般に、確率 P の事象であれば 1/P 回試行すればいいことになる。これを応用すればいいわけだ。

ランダムに当たる、n 種類のオマケを全て揃えたい。まず、1回買えば必ずどれかは手に入る。このオマケを A1 と名付けよう。次に、A1 以外のオマケを当てなければならないので、その確率は (n-1)/n である。従って n/(n-1) 回買えば A1 以外のオマケ A2 が当たることになる。

このようにして、A3 は n/(n-2) 回、A4 は n/(n-3) 回・・・と次々に買えば当たることが分かる。勿論、A3 とかの名前は「以前に当たったオマケ以外のうちのどれか」を意味し、特定のどれかではない。結局

\sum_{k=1}^{n}\frac{n}{k}

を求めることになる。n の大きなところでは n*( γ + log(n) ) + 0.5 - 1/12n に近似できる[1]。γ= 0.57721... は Euler 定数である。

以下にオマケの種類が 2 から 20 までの場合における、平均的な必要購入回数を表にした。この回数を多いと見るか少ないと見るか・・・。ちなみに上に挙げた漸近形は 1/n で冪展開したものだが、非常に高い精度で一致している。

種類 期待値 漸近形
2 3.0000 2.9990
3 5.5000 5.4997
4 8.3333 8.3332
5 11.4167 11.4166
6 14.7000 14.6999
7 18.1500 18.1500
8 21.7429 21.7428
9 25.4607 25.4607
10 29.2897 29.2897
11 33.2187 33.2186
12 37.2385 37.2385
13 41.3417 41.3417
14 45.5219 45.5219
15 49.7734 49.7734
16 54.0917 54.0917
17 58.4724 58.4724
18 62.9119 62.9119
19 67.4071 67.4071
20 71.9548 71.9548

何回買えば揃う? 補足の補足

H16/10/29

上の話の補足を書いたのだが、そこでは揺らぎの評価が間違っていた。独立試行における標準偏差は、各事象の分散の和のルートとなるのだが、補足ではルートの和をしてしまったのだ。それも粗い近似をした後で。そこでここではそれの正しい計算結果を紹介する。補足は自戒のために残しておく。

全分散は各分散 (1-p)/p^2 の和のルートで
n^2Σ1/k^2 - nΣ1/k (和は k=1,2,・・・,n)
このルートが標準偏差となる。以下に期待値と標準偏差を載せておく。

種類 期待値 標準偏差
2 3.0000 1.4142
3 5.5000 2.5981
4 8.3333 3.8006
5 11.4167 5.0173
6 14.7000 6.2442
7 18.1500 7.4785
8 21.7429 8.7185
9 25.4607 9.9630
10 29.2897 11.2110
11 33.2187 12.4621
12 37.2385 13.7156
13 41.3417 14.9713
14 45.5219 16.2289
15 49.7734 17.4879
16 54.0917 18.7484
17 58.4724 20.0101
18 62.9119 21.2729
19 67.4071 22.5368
20 71.9548 23.8015

何回買えば揃う? 補足

H15/02/17

上の話は飽くまでも期待値を評価しただけなので、それ程正確ではない。揺らぎがどれだけあるのかを気にしなければならないのである。

確率 p の事象が n 回目の試行で初めて起こる確率 P(n) は P(n)=(1-p)^{n-1}p で、従って期待値は <n>=1/p なわけだ。これを元にして計算したのが上の話。

さてこの確率の下で揺らぎを見てみると

揺らぎの式

なので、期待値とほとんど同じ値であることがわかる。 p = 1 の場合は当然揺らぎはゼロである。そして今考えているケースは k を自然数として p=1/k という形なので、k が 2 以上のとき上の近似は正しい。だから確率 p の事象は 2/p 程度の回数をこなせばまず起こることになる。このことを考慮すれば、n 種類のオマケを全種類揃えるには期待値を 2 倍した

2\sum_{k=1}^{n}\frac{n}{k}-1

個程度買えばほぼ確実と言えるだろう。このようにして上の表は次のように修正される。

種類 揃うまでの
平均購入回数
こんだけ買って
揃わなかったら諦めろ
2 3 5
3 6 11
4 9 17
5 12 23
6 15 29
7 19 37
8 22 43
9 26 51
10 30 59
11 34 67
12 38 73
13 42 83
14 46 91
15 50 99
16 55 109
17 59 117
18 63 125
19 68 135
20 72 143

参考文献

  1. 分割数の漸近挙動
[何回買えば揃う?] < [自然科学] < [オレ研] < [TOP]