[数式が上手く表示されない場合]

特殊相対論的運動量の導出

H20/4/28

1.  目標

Lorentz 変換と運動量保存則を利用して, 運動量 p

p=mv1v2c2

( m :質量, v :速度, c :光速)となることを導こう.

2.  関数形

まず運動量の関数形を考えよう. Newton力学においては, 運動量は質量 m と速度 v の積 mv であった. これを踏まえれば

という条件が課せられるであろう. こうして運動量は

  p=mv· fvc     …(1)

という形になる. ここで v=v2 であり, 関数 f(x)f(0)=1 を満たす関数である. 光速 c は常に v/c と無次元化された形で入ってくる.

3.  方針

同種粒子を重心系(運動量の和がゼロであるような座標系)で考え, それを Lorentz 変換をし, Lorentz 変換の並進方向とそれに垂直な方向では運動量の和がゼロのままであることを利用して運動量を選ぶ.

4.  導出

同じ質量 m を持つ物体A, Bを x - y 平面上に置き, 速度

vA0=(v0,w0) ,  vB0=(v0,w0)

で正面衝突させる. x 方向, y 方向共に対称なので, 運動量の和はそれぞれゼロである.

これを, 相対速度 V=(V,0) で運動している慣性系へ座標変換しよう. すると

  vA=(v0V1Vv0/c2,w01V2/c21Vv0/c2) vB=(v0+V1+Vv0/c2,w01V2/c21+Vv0/c2)     …(2)

従って速さはそれぞれ

vA=(v0V)2+w02(1V2/c2)1Vv0/c2 vB=(v0+V)2+w02(1V2/c2)1+Vv0/c2

となる. ここから, y 方向の運動量保存則を作れば

0=mw01V2/c21Vv0/c2fvA/cmw01V2/c21+Vv0/c2fvB/c

この関係式は w0 の全ての値で成り立つので, 両辺を mw0 で割って w0 0 の極限をとれば

0=11Vv0/c2f|v0V|/c1Vv0/c211+Vv0/c2f(v0+V)/c1+Vv0/c2

さて, ここで V=v0 にとろう. f(0)=1 から

f2v0/c1v02/c2=1+v02/c21+v02/c2

関数の中を x と置けば, 速度の座標変換でも示したように

1x2=1+v02/c21+v02/c22

という関係にあるので

f(x)=1x2

こうして, 相対論的な運動量

p=mv1v2c2

を得る.

5.  おまけ

上では w0 0 の極限をとったが, じっくり計算しても導ける. 先程と同じように, (2)において V=v0 と選ぼう.

vA=(0,w01v02/c2) vB=(2v01+v02/c2,w01v02/c21+v02/c2)

表記を簡単にするために vAy 成分と vBx 成分に関して

w=w01v02/c2 ,  v=2v01+v02/c2

と置こう( v は便宜上の導入で, 後に消去する.) 速度の成分は

vA=(0,w) vB=(v,1v02/c21+v02/c2w)

のようになる. 残った vBy 成分も w , v で表そう. 先程も出てきたが, 速度の変換で得た式

1v2c2=1v02/c21+v02/c22

より

vA=(0,w) vB=(v,w1v2/c2)

を得る. ここで, v の代わりにBの速さ

u=v2+w2(1v2/c2)

を用いよう. すると

1u2c2=1v2c21w2c2

なので速度の成分は

vA=(0,w) vB=(v,w1u2/c21w2/c2)

となる. こうして y 方向における運動量の和は

0=mwf(w/c)mw1u2/c21w2/c2f(u/c)

つまり

1w2c2f(w/c)=1u2c2f(u/c)

左辺は u に無関係な量であり, 右辺は w に無関係な量であるから, これは定数とみなせる. よって f(0)=1 より

f(x)=11x2

を得る.

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