磁気と肩こり

2003.07.08

TVショッピングなどでよく磁気を使った健康器具が出てくる。磁気によって血行をよくし、肩こりが治るという寸法だ。でも何故? どうやって? と思うだろう。というわけで ちょこっとネットで 調べてみた。

今までの地球と人間の関係を見れば、私達の身体はもっと磁場を欲しがっているのです。( http://www.arc-q.com/colantotte/effect/magnet.htm )
人体には弱い磁場があります。そこへ磁気を作用させると血液中のイオン化現象が進みます すると、体内の血行をつかさどっている自律神経の働きに変化が出、血行もよくなり肩こりや腰痛などの症状も解消されるのです。( http://www.arc-q.com/colantotte/effect/magnet.htm )

なんだそりゃ? 説明になっとらん。なになに、商品名がコラントッテ磁石? 肩こらんとって~ですか? 一般向けの説明だから仕方がないのかと思いきや、FAQ のページで愕然。

●磁気の効果は何ですか?
磁気はマイナスイオンを発生するという研究結果がでています。血液中にイオン化現象をおこし血行を促し、血液中の発痛物質を取り除きます。( http://www.arc-q.com/colantotte/faq/faq.htm )

はぁーーーーー…。次、行ってみよう。

わが国で磁気治療が注目されるようになったのは、磁気指輪や磁気腕輪が登場した昭和30~35年ごろ。磁気治療など、単なる気休めと思っている人が今でもいるが、医学的にその有効性はとっくに確認されていて、昭和36年の薬事法施行令の中で、治療器具のひとつとして正式に登録されている。実際、人体表面の温度分布を測定する赤外線サーモグラフィを使って試験してみると、磁気作用は明らかに血行をよくして、体温を上昇させていることがわかる。( http://www.tdk.co.jp/tjzzz01/zzz01000.htm )

ふむふむ、なるほど。してそのメカニズムは?

血液成分の中には、プラスイオンとマイナスイオンに電離するものが含まれている。これが血管中を流れるということは、電流が流れることに等しい。ここに磁石によって磁場を加えると、「フレミングの左手の法則」により力が発生する。この力がイオンの流れを活発にし、血液の流れをよくすると考えられている。( http://www.tdk.co.jp/tjzzz01/zzz01000.htm )

・・・。だから説明になってないって。フレミングの法則では血流方向に力は働きません。それにしても、

「窮すれば通ず」ということわざがあるが、まさにハイパワーの磁気治療器は、磁気欠乏(不足)症候群の現代人を救うために、生まれるべくして生まれたもの。( http://www.tdk.co.jp/tjzzz01/zzz01000.htm )

コラントッテといい、TDKといい、磁気欠乏症ってねぇ・・・。





と、わりとそれっぽいページを見つけた。

そのメカニズムを順に紹介すると、まず人体に磁気がかかると、体中のセンサーがそれを感知。そして、コリネステラーゼという酵素の生産を抑えるのです。このコリネステラーゼは、血管を拡張する作用のあるアセチルコリンを分解する酵素。つまり、分解酵素を抑えることで、血管を広げる物質を増やすという作戦です。すると、徐々に血管が広がり、血行が改善される。( http://www3.starcat.ne.jp/~syoboss/kenkou.htm )

コリネステラーゼ、というのは肩コリからもじった…わけではない。google 的にはコリンエステラーゼの方がヒットする。「体中のセンサーがそれを感知。」がかなり不満だが (説明していないのと同じなので)、比較的もっともらしいシナリオだ。アセチルコリンとコリンエステラーゼの説明は以下のとおり。

神経末端部のしくみについて(はじめに)
神経末端部では、神経と筋肉はつながっているのではなく、隙間があります。脳からの命令はこの隙間を橋渡しされます。大脳から送られた運動伝達物質(アセチルコリン)は神経から放出され、それを筋肉側にあるアセチルコリン受容体(アセチルコリンレセプター)が受け取ります。すると筋肉が収縮します。
筋肉が縮んだままではこまりますので、これを元に戻す働きがあります。この隙間にはコリンエステラーゼという酵素があり、アセチルコリンを壊します。すると脳からの命令が消えて、筋肉の収縮が元に戻ります。こうして私たちはなめらかに筋肉を動かしています。( http://www.power.co.jp/tm/MGOSK/files/genin.html )

なるほど。さらに検索を深めていくと以下のページを見つけた。

本論文は「Effects of static magnetic fields on microcirculatory hemodynamics and blood pressure in mammals(哺乳動物の微小循環系血行動態および血圧に及ぼす静磁場の影響)」と題し、ミリテスラ(mT)レベルの静磁場の微小循環系血行動態および血圧に及ぼす影響を観測することを目的として、その影響を観測する新たな手法として、静磁場曝露下の生体顕微鏡観測方法と薬理学的実験方法を導入し、その結果について論じたものであり、8章より構成されている。( http://www.core.t.u-tokyo.ac.jp/thesis/old/abst/14020.html )
第3章は「Cutaneous microcirculatory hemodynamics of rabbits exposed to SMF (静磁場曝露によるウサギの皮下組織における微小循環系血行動態)」と題し、微小循環系に対する薬剤投与を行ったウサギに磁場曝露を行い、その皮下組織における微小循環系血行動態に及ぼす影響について検討している。ここでは、皮下組織の微小循環系血行動態の観測方法として、ウサギ耳介透明窓(Rabbit Ear Chamber; REC)を作製し、上記MPPG法を用いて、このREC内の細動脈における磁場影響の観測を行っている。本研究においては、交感神経を介して血管平滑筋のレセプターに結合し、血管を収縮させる作用をもつノルアドレナリン、あるいは副交感神経を介して血管内皮細胞のレセプターに結合し、血管を拡張させる作用をもつアセチルコリンといった薬剤を用いている。ここでの観測結果にもとづいて、1.0 mTの耳介への10分間の磁場曝露が両薬剤の作用に対して拮抗的に作用し、皮下組織の微小循環系血行動態が薬剤投与前の正常な状態に近づいていることを示している。( http://www.core.t.u-tokyo.ac.jp/thesis/old/abst/14020.html )

博士論文。これはなかなか興味深いデータだ。「その影響を観測する新たな方法」ということは、現象自体は既に知られているのだろうか?

一方で次のような記事も見つけた。

●「磁気は血行を良くする」はウソ!?
日本工業新聞 1999/4/22より
「酸素放出促しコリほぐす」桐蔭横浜大が原理解明
市販の磁気発布剤が肩凝りに効くのは「血行促進」というより、血液中の酸素放出を促すためだった。桐蔭横浜大学工学部の川久保達之教授らは、肩凝りなどに貼って効くとされる発布剤などの磁気治療器の基本原理を解明した。従来は、磁場によって血液の循環が促進されると考えられていたが、川久保教授らは、磁場をかけた場所で血液中のヘモグロビンが酸素を盛んに放出する事を初めて突き止めた。酸素を体に急激に供給することで、凝りなどの体の不調が緩和されるとみなされる。これまで磁気治療器に関する研究は、磁力の弱い磁気治療器を体に貼って一晩たってから体温や血流の変化を比較する臨床的な事例が多かった。だが、こうした方法では、他の要因による体調変化の影響も大きく、物理的に現象を捕らえるのは難しかった。そこで、川久保教授らは磁気治療器の約十倍の強さがある1.2テスラの磁石を、親指と人差し指との間の皮膚の薄い部分に置き、血液中にあるヘモグロビンのなかの酸素を捕そくしている率(酸素結合度)を光透過率から測定した。対照試験したアルミ片を当てた場合はほとんど変化がなかったが、磁石を置いたときは酸素結合度が急激に減少した。ヘモグロビンは、肺で酸素を取り込み、全身にその酸素を供給する役割を持っており、川久保教授らは磁場によってヘモグロビンが酸素を放出している事を確認した。川久保教授は「ヘモグロビンの中にある鉄イオンと酸素が、何らかの磁気的な結合をしている可能性があり、外部からの磁場によってこの結束が解除されるメカニズムが考えられる」と説明する。ただ、メカニズムが解明されても副作用がないとは断言できないため、現時点では「効能があるとは言い切れない」としている。( http://www.26magnet.co.jp/m_magazine/tayori.php3?No=28 )

この記事は別にコリンエステラーゼ抑制説を否定しているわけではないことに注意。



とまあ、ざっと google で調べたわけだが、磁気には肩こりをほぐす効果があるという前提の下で、その説明としてコリンエステラーゼ抑制説とヘモグロビン酸素放出促進説が出てきたわけだ。しかし、どちらもそのメカニズムはよく分かっていない。勿論少なくとも上に挙げたページでは、の話だが。

果たして真相は・・・? 詳しい方からの情報求む!

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