ガリレオ・ガリレイによる等価原理の思考実験

レビュー

同じ重さの物体を同じ高さから同時に落下させれば、落下速度は同じである。この2物体を重さの無視できる紐で結び付けよう。このとき、2物体は先程と同じ速度で落下するであろう。紐で繋いでも接着剤で接着しても本質的に同じである。繋がれた2物体を1つの物体とみなせば、元の重さの2倍の重さが前と同じ速度で落下していることを意味する。これはある重さの物体も、より重い物体も、落下速度は同じなのではないか。

あるいは、重い物体 A の方が軽い物体 B よりも速く落下するとしよう。この重さの異なる2物体を先程と同じように紐で繋げて落下させる。すると落下速度の違いから A は B に上向きに引っ張られ、B は A に下向きに引っ張られる。より重い物体である A は上向きに引っ張られるわけだから、紐で繋ぐときよりも落下速度が落ちているはずである。最も重い2物体 A+B が、A よりも落下速度が遅いことが導かれてしまう。これはおかしい。

――と、ガリレオ・ガリレイは思考実験をしたとかしないとか。[1][2][3]

解説

文章だけを読んでもピンと来ない。等価原理は実験で検証しなければ決して正しいとは言えないはずなのに、何やら証明できてしまったように思えてしまう。

「重さ」とは重力による力の種類の一つである。そこで、上の論理展開における重さを電気力に置き換えて定量的に考えてみよう。

物体 A の質量及び電荷を M、Q、物体 B の質量及び電荷を m、q とする。一様な電場 E を掛けると、A、B そして A+B に働く電気力はそれぞれ FA = QE、FB = qE そして FA+B = (Q+q)E である。A の方が重く、更に A+B の方が重いという事に対応するのは FA+B > FA > FB である。これは Q > q > 0 を意味する。また、A の方が B よりも速く落ちるのであるから、A の加速度 aA の方が B の加速度 aB よりも大きくなければならない。これは運動方程式より Q/M > q/m を意味する。A+B の方が A より速く落ちる条件は Q/M < q/m なので、これはあり得ないことが分かる。

ここで分かると思うのだが、「重さ」と「落下速度(加速度)」は特に関係が無いのだ。重さは電荷 Q、q によって決まり、加速度は比電荷 Q/M、q/m によって決まるからだ。重力の場合、「比電荷」は物質の種類、性質、状態に因らず一定であるために、全ての物体は同じ速度で落下するのである。

同じ質量と電荷 m、q を持つ2物体を紐で繋げて一様電場中を落下させても同様である。繋げても比電荷は変わらず q/m のままなので、落下速度は変わらない。

結び

等価原理とは重力における「電荷」q と質量 m の比 q/m が一定であるという原理である。Galilei 論証は「同じ速度で落下する複数の物体を合わせた物体の落下速度は、1つ1つの物体の速度と同じである」「重い物体の方が速く落下するわけではない」の2点であり、等価原理とは直接関係は無い。しかし、そこから実験をする事によって落体の法則、等価原理を発見していくわけである。

16世紀の人物である Galilei の時代には当然運動方程式などなかったし、質量や電荷という概念もなかった。しかし彼は上で述べたような一つ一つの現象を調べ、実験し、物理学の基礎を築いていったのである。少なくとも僕にはこのような論証など真似できないし、地道にデータを取ることなど尚更である。

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