iPhone のツイッターアプリを立ち上げ、徐に呟く。
「さあて、スパをゲッティするかな。」
知らなかった。
私は知らなかった。
―― 無知の知。
かつてソークラーテスが言ったとか言わなかったとか。
無知の知。驕り高ぶる私にとって、耳が痛い言葉だ。
近年ではキバヤシ氏も
「オレにだって…わからないことくらい…ある…」
という言葉を残しているが、あまり関係ない。
そう。
スパゲッティ。
私は作り方を全く知らなかった。
市販の具。
混ぜるだけ。
和えるだけ。
そんなものに甘んじていた。
いや、もっとひどい。
「混ぜるだけだと旨くないから、フライパンで炒めながら混ぜると旨いよね!」
これ。
これだ。
確かに、確かにそれは旨いのだが、間違いだ。
知らなかった。
そう。
率直に言おう。
知らなかった。
スパは、
ゲッティは、
スパゲッティは、
フライパンで炒めない。
私は知らなかった。
何も知らなかった。
何一つ。
(いい加減長くなってきたな…)
火力。
火力が全てと思っていた。
高温で素早く。
何でもかんでも。
「低温だとべっちゃりしちゃうよね!」
これ。
このレベル。
確かに、確かにチャーハンなどは高温の方が旨くできるのだが、
(面倒になったので割愛)
というわけで、オリオーレ・エロエーラ・ペペロンチーノ、別名:アーリオ・オーリオ・エ・ペペロンチーノを作ることになった。以下が私を本気にさせた動画だ。
( YouTube )
なるほど。常に低温。弱火で。そして最後に和えるだけ。
この動画の 2/2 の最後にレシピが載っているが、油の量をレシピ通り、140gの麺に100gの油にすると物凄く油まみれになってしまった。いろいろ量を調整して旨くできるようになった。
はっきり言って、私の腕でも旨く作れた。
しかし。
しかしだ。
確かに自分で作ったペペロンチーノは旨かった。
しかしそれは本物のそれと比して同じく旨いと言えるのか?
そう。
私は基準とすべきペペロンチーノの味を知らなかったのだ。
お前はその手に持っている定規の長さを知らずに何を測っていたというのだ!
「じゃあ、イタリア料理の店に行けばいいじゃん!」
と誰もが思うかもしれないが、それは安易だ。
美味しい店で純粋なペペロンチーノは出ない。
大抵は何らかの工夫を凝らしたペペロンチーノだ。
などなど。
私の望むペペロンチーノは恐らく店で出会えることはないだろう。
ないに違いない。
と、このように、ここ数週間ペペロンチーノばかり作っている私だが、何故そんなに作っているのかというと大した理由はない。
ツイッターでステマがどうこうとパフォーマンスしていた、黒田勇樹という役者がいて、その人の投稿ビデオ:
がきっかけだ。ほんの些細な、ちょっとした言葉をググってみたら、本場の料理動画を観てしまった。
深夜に。
そして気がついたら毎晩ペペロンチーノを作っていた。
人間、未来というものは何が起こるのか分からないものだ。